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Story3
母が選んでくれた素敵なきもの
- いち瑠上野プレミアムサロン
- 加藤 梢様
私がお着物の世界に魅了されるきっかけとなったのは、母が10年以上も前に私の為に誂えてくれた着物が箪笥の中で眠っているのが気になっていた事からでした。
その当時、私に内緒で誂えた着物が自宅に届きそれを嬉しそうに私に見せてくれた母に対し、お着物に興味のなかった私は『いらなーい、それにこんな色柄好きじゃない』とつい言ってしまいました。その時のがっかりした母の顔が忘れられず若い頃の私の苦い思い出となっていました。
結婚退職し時間ができた事をきっかけに、お着物教室へ一反しか持っていないそのお着物を持って訪れたさい先生に『とっても素敵なお着物ねー!あなたにぴったり!』と誉められた時、母の事を思い涙が出そうになりました。少しづつ自分で枚数を増やした今でも人から特に誉めて頂けるのはこの着物を着ている時です。私に合うものを一番よく知っていて私の事を誰よりも想っていてくれる母が選んだ一反だからなのだと思っています。
あの頃から10年、少し大人になった私はあの時傷つけてしまった事、この着物が大好きで大切に着ていることを母に伝える事ができました。
とても嬉しいと言った母の顔を胸に今、私はお着物の楽しさと奥深さにふれる日々を送っています。